オヤジと床屋と財布

5時半。
オヤジの見るテレビの大音量で起こされる朝。
オヤジが目覚めて寝るまでテレビの音で、私の耳はぅわんぅわん。

そして。
その日もオヤジの起きた時間の加減で、朝の日常雑務がドタバタになり。
コーヒー1杯も飲めないまま……
とりあえずスーパーへ買い物に行ったら少し休めるぅぅぅと、帰り着いたところ。
オヤジがなにやら普段はかけない老眼鏡を装着、上着を着ようとしている。

おいおい。
どこに行く気なのか。

すると何を当たり前のことを聞いているのだと言うように。

「床屋やんか」と。

訪問リハビリで、外へ出て杖や歩行器で歩く練習をしてくれているせいか。
もう、自分ひとりで歩けると勘違いしている。
そうなるだろうなと思っていたが。。。

ぃゃぃゃ、ちょっと待て。
私もついていく。

ぃゃ、それよりも。
今日はもうすぐ雨が降るぞ…と
大事なことなので3回言った。
が、聞く耳持たず。
あわてて、今、おろしたバッグをひっつかみ、オヤジを追いかける。
もちろん、歩行器でなくて杖で行くと。
(私もとっちらかっていたので、自分で「雨が降る」と言いながら、傘を持たずにでかけてしまった)

私の足なら5分かからずたどりつく床屋へ到着。
だいたい、髪も少ないし、ほとんど変化がないくせに。
骨折前も月に1回、行っていた床屋。
なんでそんなに行くねん。
私なんて2ヶ月半間隔やで。

↑誇張でもなんでもなく、オヤジの髪型こんなん。
もともと剛毛・直毛(それが私のDNAにも(T_T))
五分刈りよりは長いけど、つんつんとつったっている。
(なので、父親の絵を描くのんが難しかった
宿題でなければ描かない)
晩年はハゲてはいないけど、少なくなって地肌が見えている。
1ヶ月に伸びる量もしれている……のに。

床屋に足を踏み入れるなんて何十年ぶり。
幼少時は近所に床屋しかなかった田舎なので、もっぱら床屋。
それも、私は髪が長いままだったので、ほとんど切ることもなく。
何しに行っていたのやら。。。

そこは先払いシステム。
「普通のカットでいいですか?」
え。普通以外の何があるんですかい???
オヤジに聞いても要領得ないので。
はい、普通で。なんでも普通で。
受付をすませた頃から雨が降り出す。
ぁらら。。。

待つこと、10分。
オヤジの番になったので、どのくらいの時間かかるか聞いたら、
理容師さん、オヤジの頭を見て
「15～20分くらい?」
というので、オヤジを託して走って家に帰る。

ベランダに干していた洗濯物を室内干しにし。
買い物したものを収納し。
(幸い、野菜と乾燥ものばかりだったので放置していた)
傘を1本ひっつかんで再び床屋へ。

見ると。
もうすでに顔剃りしていて。
待つこと3分。
終了。

15分かからなかったのでは。

そうそう。
待っている間にぼーーーっと店内見ていたら、斜め後ろから見たら見事にピカピカの頭のおじいちゃんがいて。
カット(?)が終わったところで。
理容師さん、おもむろにドライヤーを手にする。

えっ?!

そのピカピカの頭にドライヤーの熱をあてるの???

凝視してしまった。
幸い(?)ドライヤーは形だけで、3秒くらいで終わった(笑)
殿方には変なプライドがあるからね(笑)(笑)(笑)

そして帰宅。
これがねぇ、大変。
雨が本降り。
すべらないように左手でオヤジをささえ。
右手でオヤジが濡れないように傘をさし。
男もんの大きな重たい傘だから重たい重たい。
翌日、筋肉痛。

オヤジも疲れているからか、ふらつくし、足上がってないし。
階段も一苦労。
はぁぁぁぁぁ。

休憩するまもなく、昼ごはんの準備。
食べさせて後片付けして落ち着いたら朝ドラの再放送も終わった1時過ぎ。
やっと座って朝のコーヒーを飲んだ。

いちぉ、床屋へは一人で行かないでくれと頼んだが。
たぶん、聞いていない。

そして、翌日、事件(?)は起こった。

この日は、私が美容院に行く日。
2ヶ月以上前に予約していたのさ。
でかけるときに、外出を告げたら、監視がいないのをいいことに、昨日の今日な感じでオヤジは一人で出かけそうな気がしたが。
言わないわけにも行かないので、髪を切りに行ってくると言うて美容院に。
カット終わってから、百均とドラッグストアとスーパーに寄って帰宅。

オヤジの部屋をのぞくと。

やはりっ。

でかけて帰ってきたところだったようだ。
おいおいおいおいおい。。。

そして、何故か部屋をウロウロしている。
聞くと。

「財布がない」

こーゆーのは以前に何回もあり、そのすべてが本来しまう場所でない場所にしまいこんでいるというパターン。
なので。私もあわてず。

推理を開始(笑)

ドラッグストアでお菓子を買ったようで(はぁぁぁぁぁぁ………←ココロのため息)支払いがすんでいるということはお店までは財布はあったということ。
まずは、着ていた服のポケットをさぐる。
なかった。
次に部屋の中をさがす。
さいわい、退院後は、オヤジの部屋の家具はベッドだけ。
収納する場所も少ない。
なかった。

これは店に忘れてきたか?

ドラッグストアはすぐそこなので、私が確認しに走る。
届け出はなかったようだ。
んーーーー。落としたか?
そして、誰かに拾われたか?

オヤジはキャッシュカードもクレカも持っておらず、財布に入っているのはショップカードとロトの券。
現金は、昨日の床屋で私が確認したところでは2万円と千円札が数枚。あとは小銭。
2万円紛失は大きい金額だが、オヤジのこづかいで家計には響かない。

私が探している間にも、自分が「失敗」したことに落ち込んで、いぃぃぃぃぃっとなって、でかい声で叫ぶし。
ウロウロしたり、イライラしたり。

とりあえずなだめすかして、昼ご飯を食べさせる。
これはいちぉ、警察屋さんに届け出したほうがいいかな。
警察屋さんはすぐそこだから、片付けたら行かねば。

オヤジがご飯を食べている間に、念のため、もう一度、部屋を探索。

………ありました、財布。

ネックウォーマーや手袋をいれている小箱の中に。
ネックウォーマーの下に押し込んでありました。
最初、探していたときは、まさか、衣類などの下にあるとは思わないからみつけられなかった。

なんで下に入れ込む???

まだご飯を食べているオヤジに報告すると。

「あっ、そう」

?????????

おいおい、あんだけウロウロ、イライラ、むきぃぃぃぃっとなっていたくせに。
どこにあった?とも聞かないのか。

はぁぁぁぁぁぁぁ。

でも、落ち込んでいるのは確かなので、ここぞとばかりに。
「足元も不如意でふらつくし、しばらくは一人ででかけんでくれ。
散歩なら私がつきそうし。
買い物かて。
言うてくれたら私が買ってくるし
(これはたぶんイヤなの、自分で好きなお菓子を買いたいの、わかっているが…)」

とりあえず、財布の件があったので、しばらくは一人で出かけることはしないかと。

そんなこんなで2日続けてドタバタな午前中だった。
さすがに疲れた。

さらにその翌日。

訪問リハビリの日。
お兄さんに、オヤジには聞こえないように小声の早口で、この2日の出来事を報告し。
お兄さんからも「足の状態からまだ一人で出かけることはしないように」と忠告してくれて。
プロの人が言うてくれると助かる。
(私の言うことは　左から右へ聞き流す)

おかげで、散歩つきそいが増えたが。
(家の周りを10分程度歩くのだが、これもね、ほんと危なっかしいねん。
後半なんて全然足が上がってない。
高齢者の骨折、退院してすぐに再度骨折する人が多いらしいのんは
こんな高齢者が多いんじゃなかろか。
退院=すっかり完治で元通りってな。
ぃゃぃゃ、明らかに弱ってるって。前のようにはいなかいって。
老いては子に従え……って。。。ねぇ。。。ねぇぇぇ。。。)

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ハナミズキ。
早くに咲いたけど、まだ朝晩が冷え込むからか、長く楽しめている。
でも、そろそろ終わりかな。

ツツジは漢字で書くと、なんかおどろおどろしいと思ってしまう。
躑躅　ツツジ　「髑髏」と似ているから…